高すぎて買えない腕時計! 価値を決める驚きの理由

腕時計
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はじめに

 桁外れの額で取引される腕時計の世界では、オークションで数十億円もの値が付くことも珍しくありません。なぜ時計がそこまで高価になるのか。本記事では、世界で最も高価な腕時計ベスト3をご紹介し、それぞれのモデルの背景や特徴、そして一般の方にも分かりやすい価格高騰の理由を解説します。ブランドの歴史的な意義や希少性、有名人との関わりなど、単なる時を刻む道具を超えたドラマに注目してみましょう。

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第3位: パテック・フィリップ 「リファレンス1518」ステンレススチール

 パテック・フィリップ Ref.1518(リファレンス1518)は、1940年代に製造された伝説的な高級腕時計です。2016年のオークションで約1,100万ドル(当時約12億円)もの価格で落札され、当時の腕時計オークション史上最高額を記録しました。このモデルは世界初の永久カレンダー付きクロノグラフ腕時計として1941年に発表されており、その技術的偉業から時計史に名を残しています。

希少性と歴史的意義
 Ref.1518は長い歴史の中でも極めて珍しいモデルです。特にステンレススチール製の個体は現存するものが4本のみ確認されており、その希少性ゆえに通常のゴールドモデル以上の人気と価値があります。一般的に高級腕時計では金やプラチナなどの貴金属が使われますが、当時は第二次世界大戦下で物資が制限されていたため一部にステンレスケースが用いられました。その生産数が極めて少なく、オークションに出品されたものは70年以上経ってもとても状態が良かったため高額な値が付いたのです。

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第2位: ロレックス デイトナ “ポール・ニューマン”(ポール・ニューマン氏 所有モデル)

ロレックス デイトナ “ポール・ニューマン”は、俳優ポール・ニューマン氏が愛用していたことで知られる特別なヴィンテージ腕時計です。2017年10月、ニューヨークのフィリップスオークションにて1,780万ドル(当時約20億円)で落札され、腕時計として当時の史上最高額を記録しました。
 ヴィンテージのステンレス製ロレックスがここまで高額になった理由は、腕時計そのものの価値以上にストーリ性とポール・ニューマン氏の存在が深く関係しています。

 出品されたのは1960年代製造のロレックス「コスモグラフ デイトナ」Ref.6239で、ニューマン氏自身が実際に所有し長年使用していた本人私物の腕時計です。ニューマン氏のデイトナはアイボリーに黒のインダイヤルを配した独特の意匠の文字盤を持ち、このデザインは後に「ポール・ニューマン・ダイヤル」と愛好家に呼ばれるようになります。ケース径は約37mm、素材はステンレススチール製で、機械式の手巻きクロノグラフムーブメントを搭載しています。宝石や複雑機構があるわけでもなく、一見シンプルなスポーツウォッチですが、その背景に特別なストーリーがありました。

・ポール・ニューマンとこの時計の物語:
 ポール・ニューマン氏は俳優であると同時にレーシングドライバーとしても活躍した人物です。彼がこのロレックスを手にしたのは1969年公開の映画『Winning(邦題:栄光のル・マン)』の撮影時だったと言われています。
 妻ジョアン・ウッドワードさんから贈られたもので、裏蓋には「DRIVE CAREFULLY ME」
(私よりお願い、安全運転で)という愛情のこもったメッセージが刻まれていました。
 ニューマン氏は以後、公私問わずレースの場でもフォーマルな場でもこの時計を愛用し続け、やがてこの時計は彼のトレードマークとなります。その後、ニューマン氏が身に着けていた同型のデイトナは「ポール・ニューマンモデル」と呼ばれてヴィンテージ時計市場で伝説的な地位を築くことになります。

 1984年、ニューマン氏は自宅にある小屋を修理してくれた娘のネルの当時の恋人ジェームズ・コックス氏に、このデイトナをお礼として譲りました。その後コックス氏の手元で大切に保管されていましたが、2017年になりオークションに出品されることとなりました。由緒正しい持ち主から直接譲り受けた逸品であり出自が明確だったことが高額になった理由の1つです。

・価格高騰の理由
 ポール・ニューマンのデイトナが桁違いの価格に至った最大の要因は、何と言ってもその時計が持つストーリーと持ち主です。時計自体は決して素材が贅沢なわけでも技術的に希少なわけでもありません。実際、同型のヴィンテージ・デイトナ(いわゆる「ポール・ニューマン」文字盤を持つモデル)は何千本も現存しており、時計そのものの市場価値は数百万円〜数千万円程度とされています(それでも高い)。
 しかし、「ポール・ニューマン本人が実際に着用していた唯一の時計」という揺るぎない圧倒的な価値と物語が付加された瞬間、その価値は通常の尺度では測れない領域に跳ね上がったのです。

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第1位: パテック・フィリップ 「グランドマスター・チャイム」Ref.6300A-010(Only Watch 2019 特別モデル)

 栄えある第1位は、スイスの名門パテック・フィリップが2019年に発表した唯一無二の腕時計、「グランドマスター・チャイム」Ref.6300A-010です。
 2019年11月にジュネーブで開催されたチャリティオークション「オンリー・ウォッチ(Only Watch)」で出品され、3,100万スイスフラン(当時約34億円)という史上最高額で落札されました。従来の腕時計オークション記録を大幅に更新したこの驚くべき高額落札の背景には、時計自体の超絶な技術と芸術性に加え、「世界に一本限り」「慈善目的」という特別な状況がありました。

・時計の概要と製造背景
 グランドマスター・チャイム6300A-010は、パテック・フィリップがOnly Watch 2019のために特別製作した1点物(オンリーピース)です。同社のグランドコンプリケーション(超複雑機構搭載モデル)の頂点に立つ存在で、本来はゴールドやプラチナで作られるモデルですが、この1本に限ってステンレススチール製ケースが採用されました。
 パテックほどの高級メーカーが最上位モデルにステンレスケースを用いるのは極めて異例であり(過去にもRef.1518等ごく数例のみ)、それだけでもコレクター垂涎の的となるのは明らかでした。
 さらに、Only Watchは筋ジストロフィー研究支援のため2年ごとに開催される慈善オークションであり、各ブランドが世界で一本の特別モデルを出品することで知られます。本作もその趣旨のもと製作されたため、「誰かが一度も腕にしたことがない新品の特別モデル」という付加価値があり、落札額は全額寄付されることから富豪たちの入札意欲を一層掻き立てました。

・デザインと機能
 ケース径は約47.7mm、厚さ16mm超にもなる堂々たるサイズで、両面に文字盤を備えたリバーシブル仕様となっています。片面はローズゴールドの文字盤で現在時刻や第二時間帯表示を読み取り、もう片面は黒の文字盤で永久カレンダー(年・月・日表示など)を示すという独創的なデザインです。ケース側面やラグ(バンド取り付け部分)にはパテック伝統の手仕上げギヨシェ彫り(クル・ド・パリ装飾)が施され、ステンレス素材でありながら非常に豪華かつ工芸品的風格を漂わせます。文字盤は両面とも18金製のプレートが用いられ、細部まで高級感と職人技が行き渡っています。

 最大の特筆すべき最大の点は、時計の内部に収められた超複雑ムーブメントでしょう。手巻き式のキャリバー300搭載のこの機械は、パテック・フィリップが誇るあらゆる複雑機構を統合し、合計20種類もの機能(コンプリケーション)を備えています。これは腕時計史上最多クラスの複雑さであり、まさに技術と芸術の粋を極めたものです。

 結果としてこの時計はそれまでの腕時計オークション最高額を1.7倍以上という圧倒的な差で更新し、世界に大きな衝撃を与えました。落札後、匿名の落札者がどのようにこの時計を楽しんでいるのかは定かではありませんが、少なくともこのニュースは世界中で大きく報じられ、一般メディアにも「時計に34億円!」と取り上げられるほど話題となりました。現在もその記録は破られることなく、史上最高額の腕時計として、現在もこのグランドマスター・チャイムがトップに君臨しています。

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おわりに:高額時計に共通するものとは?

 以上、世界で最も高価な腕時計トップ3をご紹介しました。これら桁外れの価格がついた時計に共通して言えるのは、「時を知らせる道具以上の価値」が見出されている点です。いずれの時計も、希少性や歴史的意義、ドラマチックな背景ストーリーを備えており、それがコレクター心理を刺激して価格を天井知らずに押し上げる原動力となりました。

とはいえ、どんなに値段が高騰しようとも、それぞれの時計には持ち主たちの思い、職人たちの技と情熱、歴史を経て受け継がれてきたストーリーが宿っているのです。
 ただ値段の高さに驚くだけでなく、その背景にある何かに思いを馳せるとき、高級時計の世界がより一層興味深く感じられることでしょう。

たびどり

元時計販売員。販売員時代に培った知識と経験を生かしながら、AIを駆使して趣味でブログを作成。ふと、誰かの時計選びの参考になればと思いブログを立ち上げました。好きな時計ブランドはゼニス。埼玉、神奈川、東京を転々とし、現在は栃木県在住。

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